2021.01.18

2020S/S「Unfocus」。見えすぎる世界への挑戦

2021年2月12日。我々D-VECは釣具メーカーDAIWAのノウハウを活かした物づくりをさらに進化させるため、元B Yohji Yamamotoのデザイナー、パタンナーとして活躍した齊藤亮太を新たに迎え、2021S/Sコレクションを発表します。そこで今回は齊藤亮太に、我々D-VECのコレクションをどのように進化させたのか、そして彼自身のパーソナリティーについても紹介して行きます。

まず、今回のコレクションのテーマを教えてください。
今季のテーマは「Unfocus」になります。
D-VECのブランドコンセプトのひとつに、「AVEDON FOCUS」という言葉があります。写真家リチャード・アヴェドンの、水面の動きによって常に変化する状況の中、一瞬を切り取る撮影法で、そこからインスピレーションを受けました。そして「揺らぐ」「ぶれる」など、水を通したらどのように見えるのか、という着眼点から広げて、最終的に「Unfocus」というテーマでコレクションを制作しました。具体的には、水を通すとぼやけて見えるので、アシメントリーなアイテムが多かったり、揺らぐという視点からジェンダーについての境界線を意識して、ユニセックスで着られるアイテムを制作しました。

なるほど。「Unfocus」が、D-VECのデザイナーに就任して初めて手がけたコレクションのテーマになっているのですね。これまでのD-VECのラインアップとは大きく異なりますよね?
最終的には、機能性とモード、それぞれが50%ずつくらいのバランスが完成形だと思っていますが、今までのD-VECからの振り幅が大きい方がインパクトがあるだろうと、思い切りモードに振りました。これまでのD-VECのコレクションは、機能性を街着としてユニークに落とし込むことに成功していたと思うのですが、アイテムからはスポーティーな印象を受ける人も多かったのかなと思います。ゆくゆくはパリコレを目指せるようなモードブランドとして進化させて欲しいという依頼もあり、僕が得意とするテイストを、より強く打ち出しました。

「Unfocus」というテーマに最終的に落ち着いた理由を教えてください。
もちろん「揺らぐ」「ぶれる」などがキーワードになっているのですが、今の時代は4Kや8Kなど、「見えすぎる」表現が多いのかなと。アナログのカメラじゃないですが、見えすぎない方が良いのでは?と常日頃から思っていて。

インターネットで調べれば、「見る」ことができ、それが「理解」となり、なんでも短略的に「わかった」と思い込みやすい環境ではありますよね。
1番怖いことですよね。わかった気になっているけど、実はわかりきれていない物事ばかりですから。僕自身も思い当たる節はあって、携帯で簡単に物事を調べられるので、深掘りできていない状態のままやり過ごしていることが多いなって。
一方でファッションは、「無駄」を楽しむことが大切だと思っているので、見えすぎない、わかりすぎない、ことの面白さを打ち出すという意味でも「Unfocus」というテーマに決めました。

そんなテーマがわかりやすく反映されているアイテムは、このレーザーカットのロングジャケットですかね?
そうですね。揺らぐという意味で曲線的なラインを描きながら、服に空白の部分を残すことにより、着た人の動きや風によって形が変わるようなデザインにしました。左右非対称のディテールと合わせて、強いデザインですが、儚げな雰囲気を持つアイテムに仕上がったと思います。
ビジュアル的にも、「無駄」を楽しめるアイテムになっていると思います。ただ、それだけではなくて。

どういうことですか?
実はDAIWAの技術がなければ作れなかったアイテムでもあるんです。この断面はレーザーカットで裁断しています。もともとゴアテックスやナイロン、ポリエステルを裁断するときに、レーザーを使うのですが、これまで僕が関わってきた工場では使用することができなかった技術なんです。それがDAIWAなら、長年ゴアテックスを扱ってきた技術がある、しっかりとした生産背景があるので、実現できたアイテムでもあるんです。レーザーでカットする利点としては、通常であれば生地端は縫い返し等が必要になるのですが、ほつれることがないので、切りっぱなしのまま使用することができます。

その断面が、凹凸がなく直線的な印象を放ち、よりストイックというかモードな雰囲気を印象付けますよね。
ウール見えする上質なポリエステル素材を生地として使用することで、そこでも「揺らぎ」というかニュートラルなバランスを意識しています。曲線的なカットにしているのは、体に負荷がかかる部分というのは、どうしても生地が摩耗しやすいので、それを考慮しながらデザインしています。また、パターンとしては、フリーハンドで線を引いているように見えるかもしれないですが、体の筋肉をなぞるようなラインでカットしています。人間の既視感を意識して、あまりアバンギャルドな印象を持たれすぎないようにバランスをとりました。

なるほど。ビジュアル的には「無駄」を楽しむような佇まいでありながら、「Unfocus」というテーマと、DAIWAの技術が融合したアイテムになっているのですね。
DAIWAの技術は、僕もまだ携わってから日が浅いこともあり、把握しきれていないですが、これまで携わってきたアパレルの世界では考えられないすごい技術を、あたり前のように使っていることが多々あるので、今後はよりアーカイブを紐解いていって研究していきたいと思っています。

そこに齊藤さんが培ってきた経験が融合したコレクションとなっていくのですね。ちなみに、齊藤さんがファッションに目覚めたきっかけは何だったのでしょうか?
ファッションに興味を持ったのは、私服の高校に通うようになってからなので、かなり後発的な方なんです。それこそ、その後、文化服装学園に入学するのですが、それまでヨウジヤマモトも知らないくらいで(笑)。

では、どんなスタイルの高校生だったのですか?
着物の肌襦袢ってありますよね?あれをコートの内側に着るようなちょっとやばい高校生でした(笑)。ファッションに対して、後発的というのもあって、その頃から良く言えばフットワークが軽いというか、次々と新しいものへ興味が変わっていきました。悪く言えば軸がないとも言えますが、それが僕の強みでもあるなと自覚していて、新しいものを生み出し続けるデザイナーという職業についた理由でもあると思います。

そういう意味でもD-VECは、より斬新で新しい世界観が打ち出されていくのですね?
そこにDAIWAが培ってきた技術をどうやって融合させられるか、今から楽しみでなりません。