INTERVIEW

2020.05.15

長崎勇平さん(ビジュアル・マーチャンダイザー)

「釣りのように仕事ができた瞬間」

D-VECが掲げるコンセプトである「Feel Alive(最高の瞬間を感じる)」をテーマに、
様々なジャンルで活躍する方々にインタビューをおこない紹介する連載企画。
第1回目は、D-VEC表参道ヒルズ店のVMDをお願いしている長崎勇平氏をお招きします。

Q:改めて、D-VEC表参道ヒルズ店のVMDを担当してくださることになった経緯を教えてください。

A:1番最初にお仕事をさせてもらったのが、昨年5月でしたよね。D-VECさんが、シーズン演出を表参道ヒルズの1階でショーウィンドウのディスプレイをおこなうときに、呼ばれたのがきっかけです。世界一軽い傘を使い表現してほしい、というリクエストでした。

Q:このときは、どのようにコンセプトを立てていったのですか?

A:まず、お客様がパッと見たときに傘であることを理解して欲しく、雨を表現しようとプランニングさせてももらいました。D-VECは、もともと、釣具メーカーDAIWAのブランドなので、カラーの釣り糸があるだろうし、それを天井から床に向かってひけば、雨に見えるだろうと。雨って認識できたら傘って連想できるじゃないかと。 また、ショーウィンドウはパッと見たときに、目につかないと話にならないんです。そこで、光、色の集合体なども演出しました。小学校のころの遊びで、教室から校庭にいる友達に向かって、光を鏡に反射させると絶対こっちを見るじゃないですか?多少、不快に感じるかもしれないけど、光って一瞬は目を引くので、意図的に取り入れてます。

Q:とてもインパクトのあるディスプレイでしたよね。その流れで、地下にあるショップも手がけてもらうことになりました。

A:D-VECのお店も同様のコンセプトで統一しようということから担当させてもらいました。そこから、月に1度、店内のレイアウト変更を担当させてもらってます。

Q:ショップは、どのようなコンセプトでレイアウトをしているのですか?

A:D-VECの商品は、常に新しい発見があって面白いですよね。例えば、今日僕が履いているパンツにしかり、普通のアパレルブランドではやらないことが、いっぱい盛り込まれています。このパンツは、まず聞いたことがない、撥水加工が施されたダブルラッセルという素材なんですよね。パンツで、ファッションとテクニックが融合したアイテムって他のブランドでは、なかなかないので、雨のなかでショーウィンドウの作業をしたりする職業柄、軽いし伸縮性もあって、とてもありがたいんです。
そういった意味でも、機能性が高い商品が多いというのがまずあって、そして、インバウンドが多い立地、ブランド知名度が高い、というところから、なるべく作品っぽく見せるよう心がけています。

Q:作品っぽくとは、具体的にどのようなレイアウトにしているのでしょうか?

A:D-VECは色彩豊かなアイテムが多いこともあって、カラーコーディネートでみせています。正直、お客さんからすると手にとったアイテムの色違いが隣にないのは探しにくいかもしれません。でも一方で全体感としては美しく整って見えます。そうすることで、商品の価値が高く見え、売りたい商品をより良く見せる効果があるんです。大体、企業のVMDって売りたい箇所ばっか飾るんですよ(笑)。入り口に近いテーブルとかマネキンの横のラックとか。実は壁面こそが、お店全体を印象付けるんです。表参道という立地を考えても、ゆっくり接客できるので、1点1点の価値を高く見せ、吟味時間を伸ばし、購買率をあげるという手法をとっています。

Q:なるほど。また、ホンダのショールームやキールズ、ウェディングまで様々なジャンルのお仕事を手がけていますよね?

A:ホンダさんの場合は、高級車ブランドがコンペティターになるのかなと思っていたんですけど、そうじゃないんですね。ホンダさんの話を伺うと、誰でも入りやすく集いやすい、みんなに愛される空間を目指しているということで。僕は青山一丁目にあるショールームの物販部門を担当したんですが、常にこの場に触れ合ってもらい「いつか車を買うときはここで!」って思ってもらえるような空間を意識して作りました。

Q:ゆとりを持ったスペースで、1点1点しっかりと見せるようにしたってことですか?

A:それとはちょっと違います。ショールームって気軽に買い物にくる場所じゃないから、積極的に1点1点を吟味したりはしないんです。大切なのは雰囲気です。雰囲気を良い感じに見せておいて、その中で絶対に売れるもの・買いやすいもの、例えば、1枚3000円のTシャツとかを手にとらせるんです。今回の場合は、テーマを大人のガレージとし、こういうのが自分の家にあったら良いなと思わせる「できそうでできない空間」を作って気持ちをあげておいて、我々が売りたい商品を価値高く演出して手にとっていただく。極端な話、他はそれを引き立てる飾りなんで売れようが売れまいが、お客さんマターで良いんです。

Q:そんな長崎さんが、VMDの仕事をやっていて、「Feel Alive」最高の瞬間と思えるのはどういったときでしょうか?

A:やっぱり売り上げがあがった瞬間ですね。すべてはそこです。以前、あるブランドが、とある地方にお店を出すということでオープニングを担当させてもらったんですけど、オープン初日、店を開けた瞬間に津波のように人が入ってきたときに「最高だな」って思いました(笑)。レジがひとつしかない小さいお店で、1日に300万とか400万とか売れて。

Q:そのお店では、どのような仕掛けをしたんですか?

A:お店の工事が終わってオープンの数日前から、搬入とか準備をしながら、2日前にはシャッターを開けて、スタッフの子が予行演習でオリエンテーションをやってるのとか、芸能人からの花が置いてある様子とか、道から通りがかった人が見える状態にしておいたんです。そしたらお客さんが入り口でじっと見てるんですよ。「何のお店ができるんですか」って聞かれるから、予め用意しておいた、オープン日に限り10%オフになるチラシを配るんです。そしたら当日そのチラシを必ず持ってくるんです。要するに釣りでいったら撒き餌をまくみたいな感じです。そんなこともブランドと一緒に考えて、結果が出たときは最高でしたね。

Q:面白いですね。

A:撒き餌っていうと聞こえは悪いかもしれないですけど、VMDの仕事って本当に釣りと似てるんですよ。

Q:釣りですか…。どういうことですか(笑)?

A:兵庫県の須磨海岸の近くに住んでいることもあり、そろそろアジが食べたいと思ったら竿とクーラーボックスを持って、50匹くらい釣ってきて、自分でさばいて食べるみたいな。
釣りは趣味というよりかは、スーパーに買い出しに行くのと同じ感覚なんです(笑)。そのように、よく釣りに行くのですが、いつもVMDと一緒だなって思うんです。

なぜなら、釣りって目的があるでしょ? 例えば、僕は、今日アジを釣って、晩ご飯はアジフライにするって決めて、釣りに行くんですが、目的が決まってるから、アジを釣るには、この竿で、この餌で、と準備をします。 ときには、なかなか釣れないときもあって、なんでだろうって周りを眺めると、隣のおっちゃんが、めちゃくちゃ釣ってる。観察していると、仕掛けを結構深くもぐらせてるな、俺も真似してみようと。それでも釣れないと、また考えるんです。潮の流れで、僕のエサがおっちゃんの方に流れているんじゃないかと予測し、さらにその下に移動したら、めちゃくちゃ釣れたり。

これを、VMDの仕事に置き換えると、今日は赤のコートを売らなくちゃいけない。周りの店を見てみると、気温もちょっと寒くなってるから、やはりコートを出している。その店が、青のコートをメインに見せているってことは売れてるってことだろう。じゃ、うちも同じような青のコートを目立つようにしてみよう。あれ売れない。うちのブランドらしくないものになっちゃってるからかな、と考えて、うちのブランドらしいものに変えてみる。触るけど売れへんな、なんでだろう?価格表示が問題なのかな?と価格表示を見やすくレイアウトを変えてみたら、思ったより安いなって思ってくれて、試着までいきました。
みたいに、売りたいものはこれ、釣りたいものこれ、いろいろ考えながら、最終的に、売れたら釣れたじゃないですか。釣りもVMDの仕事も、そうやって釣れる、売れるまで試行錯誤するところが似てるって思っています。

PROFILE 長崎勇平さん(ビジュアル・マーチャンダイザー)

1989年、株式会社ワールドに入社。
2001年に開発VMD(新規・リブランド)、2003に開発VMD、アジアVMD開発を担当。
2012年、SWELL設立。
VMD導入コンサルティングやVMD育成研修、店舗実施など幅広く活躍中。

https://www.instagram.com/yuheiii/